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透析と看護 |
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1)人工腎の歴史 |
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§人工腎の歴史 |
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人工腎臓の発展史は表1の如くであるが、1955年、朝鮮戦争の挫滅症候群に伴う一過性の急性腎不全に対し、Smith.Shawらが野戦病院に人工腎臓班を設置し、その活躍によって死亡率を90%から50%に低下せしめ得た業績とともに慢性症に対する適応の拡大は、腎不全対策の画期的進展を物語るものといえよう。
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表1 人工腎臓発展史上の主な業績 |
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1912年
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Abel等
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血液の体外循環による透析の可能性を動物実験により実証す。
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1925年
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Howell等
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坑凝血剤ヘパリンを発見、体外循環の完全な実験を可能にする。
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1928年
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Ganter等
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生体膜を用いる透析に患者自身の腹膜を利用、今日の腹膜灌流の基礎を開く。
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1938年
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Thalhimer
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透析膜にセロファン膜を利用、透析効率の飛躍的向上と操作の簡便化をみる。
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1943年
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Ko1ff等
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Rotating dram型人工腎臓を用いて史上初の臨床応用に成功する。
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1948年
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Skeggs等
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積層型の透析装置を考案し、後のKill型人工腎臓の基礎をつくる。
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1956年
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Ko1ff等
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Rotating dram型を改善し、Disposable twin coil Kidneyの作成、臨床を確立す。
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1960年
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Kill
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Skeggsの積層型透析装置を改良し、Kill型人工腎臓を完成す。
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Seribner
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体外循環用にテフロン製の動静脈用短絡装置Cannlaを考案し、頻回の透析を可能にし慢性腎不全の適応に包含せしめた。
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1962年
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Seribner等
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Permanent ShuntにSi1astic tubeを導入し、Shunt事故をさらに激減させる。
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1966年
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Brescia等
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arterio-renous fistu1aを完成し内ツャント完成す。
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§人工透析の原理 |
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腎は多くの複雑な機能を持っている。そのうち最も重要な働きは、水電解質バランス、体液浸透圧、体温量、酸塩基不衛を調節し、生体に不要な代謝産物を排泄することにより生体内部循環を一定に維持することである。この結果生成されたものが尿であり、腎における尿の主成は、・糸球体の濾過、・濾液の一部の尿細管における再吸収、・尿細管の分泌の過程を経て行なわれる。このように腎は排泄器官として尿を生成するほか、重要な内分泌機能を有して居り、エリスロポエチン、プロスタグランディンというホルモンや、レニンなどの酵素を生成している。
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人工腎臓は、これら正常腎のすべての機能を代行するわけでなく、正常腎の原生成過程における糸球体の機能、すなわち無選択的な濾過機能を代行しているに過きず、尿細管における選択的再吸収や分泌機能は、行なわれない。もちろんホルモンや酵素の生成も行なわれない。
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透析の原理は「膜を介する物質の拡散」であり、膜として腹膜を用いる方法を腹膜透析Peritonel dia1ysis(P・Dと略す)といい、半透膜を用いる方法を血液透析 Hemo dialysis(H・Dと略す)という。
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1)腹膜透析の原理 |
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・拡散(浸透) |
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・浸透圧 |
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2)血液透析の原理 |
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・拡散(浸透) |
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・浸透圧 |
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・限外濾過 |
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半透腹を介して一方側に血液を入れ、他方側に透析液を入れると血液と透析液の濃度差により(Donnanの膜平衡の原理)、水、電解質、分子の小さい溶質は、半透膜にある平均40Åという微細な膜を通って自由に移動する。その結果血液中にたまった尿毒、クレアチニン、尿酸などは血液より透析液に移行し透析が行なわれる。
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また水分除去の方法としては、浸透圧差による方法と限外濾過による方法とがある。半透膜で境された2つの液相間では、水分は浸透圧の低い方から高い方へ移動する。腹膜透析では、もっばらこの原理に基づき透析液の浸透圧を高めて、水分すなわち浄腫液の除去を行なっている。血液透析では、浸透圧差によるほか、限外濾過によっての水分除去が行なわれている。限外濾過とは、膜内外の圧力差を利用して水分を除去する方法のことで、これに2通りの方法がある。すなわちコルフ型に用いられる方法のように、血液回路の静派側をクレンメで締め、細くし、回路内に血液を充満させ、コイル内圧を上昇させ・半透膜チューブの膜の内外に圧力差を生ぜしめ水分をしみ出させる方法と、キール型やハロファイバー型に用いられるように透析液の回路が密閉されている回路では、透析液が陰圧で引っぱることにより膜の内外で圧力差を生じ水分を除去する方法とである。この限外濾過による水分移動の際は、同時に分子の小さい溶質の移動も行なわれる。
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最近行なわれ始めたHemofi1tration(H・F:血液濾過)は dia1ysisでないのでこれについては後日述べる。
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透析と看護 各論
井上 しょう一著 |